インスブルックへ回遊
ミュンヘン再び
うるさい乗客
ゴッタルト峠
ミラノ1泊目
ペンドリーノ
コロッセオ
蒸し風呂、早着
ミラノ再び
ティラノまで
ベルニナ急行
サン・モリッツ
氷河急行
インターラーケンへ
ユングフラウ・ヨッホまで往復
チューリッヒ
日本へ
前編へ戻る。
今日8日は調整日で、特に何をするとも決めていません。ユーレイルパスに付いてきたヨーロッパの鉄道地図を眺めていたところ、オーストリアのインスブルックまで日帰りできそうだと分かりました。しかも、行きと帰りで経路を変えて。
行きは、峠越えのローカル線で行くことにしました。途中にリゾートでもあるらしく、車内は若者や家族連れで込んでいました。列車はのんびりと丘を越え、徐々に山並みに近づいていきます。幾つめかの駅でICEとすれ違いました。なんでこんな所を走っているのかと不思議に思って時刻表を見ると、この先、ガルミッシュ・パルテンキルヘンまで土曜だけ運転される列車があり、おそらくミュンヘンへの回送の途中だと思います。山並みがいよいよ間近になってガルミッシュ・パルテンキルヘン着。乗客がどっと降りていきました。
身軽になった列車が峠のトンネルを抜けると眼下にチロルの谷が見えてきました。谷を挟んで向かい側にはヨーロッパアルプスが見えます。国境を越えたらしく、パスポートチェックもちゃんとありました。列車は谷の斜面をひたすら降りて行きます。そして、谷底の街インスブルックに到着しました。
すっかり忘れていたのですが、そういえば帰りの飛行機のリコンファームがまだでした。今日は土曜日ですから航空会社に連絡を取るのも難しいとは思いますが、駅前にオフィスがありそうなので、駄目元で探してみることにします。闇雲に探しても仕方ないので、見回したところ目に入ったのが郵便局。知らないはずはありません。窓口氏は、いきなり道を尋ねた闖入者に親切に対応し、地図で示して教えてくれました。おかげでたどり着けたのですが、オフィスはやはり休みでした。
さて、帰りは谷沿いに東回りでミュンヘンへ戻ります。こちらの方が幹線で、ECも走っています。私もイタリアから来たECに乗ることにしました。列車はチロルの谷をしばらく東へ走ってから北上し、再び国境を越えました。この時のパスポートチェックの係員はイタリア人3人組みで、私のコンパートメント(6人室を一人で貸し切り状態だった。)に入ってきてチェックを終えた後、「リブロ?」と尋ねたようでした。きょとんとしていると、「リブロってのは『空いていますか。』って意味だよ。」と英語で説明してくれたので、'Yes,Please'と答えると全員がどっかと腰を下ろしました。このままミュンヘンまで一緒はかなわんなと思っていたら、次の駅で降りていきました。
ミュンヘンに戻って、ホテルのフロントに帰国便のリコンファームを頼むと、その場でオフィスや空港の窓口へ電話してくれたのですが駄目でした。「まだ時間があるから。」と言われましたが、この先の行程はイタリアです。イタリアに行ってからよりはドイツに居るうちにやっておきたいのが人情です。(偏見でしょうか。)
気を取り直して街に出ました。相変わらず暑いので、アイスクリームを買って(「ミュンヘンへ来たらビールだろうが。」とお思いの方々。私は下戸です。)店の前の歩道に出されたテーブルで、パラソルの下「ザウルス」(携帯情報ツールです。)で支出の記録をつけていると、店員が寄ってきて「それは、コンピュータか。」と尋ねました。このあたり、いかにもドイツです。
まだ日が高いので、地下鉄とトラムにも乗っておきます。券売機は判らないながら、クソ度胸だけはついてきました。路線図を見て、ミュンヘン中央駅を通るトラムに乗り継げる別の駅を通る地下鉄に乗ります。2、3駅で下車、系統番号を間違えないようにトラムに乗ります。そして無事ミュンヘン中央駅着。日本では鼻歌交じりでやることも、結構緊張感があります。
ホテルの部屋へ帰ると、まだ天井の蛍光燈はパカパカしていました。フロントに苦情を言いに行く元気が残っていなかったし、それに夜遅くまで外が明るいので、「まあいいか。」ということにしました。
今日は、ミラノまで行きます。ミラノまでならインスブルック経由の直通があるのですが、「ゴッタルト峠の2重ループ線」を通るためにチュリーッヒを経由します。
チューリッヒまでは、特に何も期待するものはなくのんびりと車窓を眺めているつもりでした。しかし、そうはいきませんでした。ミュンヘンで乗り込む際、どう見ても日本人といったバックパッキングをしょったおばさんが一人いたのですが、この人が2つ向うのボックスで喋ること喋ること。しかも大声で話しているので一等車の車内に響き渡っています。おばさんの話し相手は英語しか分からないのですが、おばさんは英語で話しかける合間を日本語でつないでいるので、日本人の私としては内容が非常によく分かってついつい気を取られてしまいます。私は自分自身が迷惑な上に、日本の恥を目の当たりにして窮屈な思いをしていました。
それは、終点のチューリッヒまで続きました。覚えている景色はボーデン湖ぐらいのものでしょうか。やれやれ。
気をとり直して、チューリッヒからECでミラノまで行きます。屋根まで窓が回り込んでいる展望のいい客車(JRなら251系電車が一番近いと思います。)に乗り込んで席を探すのですが殆どの席に、予約の札が入っています。しかもみな同じ区間の予約です。どうやら団体のようです。時刻表を見ると片方の駅はすでにこの列車が通ってきた区間にあるようです。となれば、この先はずっと空いているということになります。
一応心配なので確認のため、同じ表示の入っている席に座っている女性に「ミラノまで行くのですが、この札が入っている席は座っていいんでしょうか。」と尋ねると、予想通り「この区間は、もう通り過ぎています。」とのこと。安心して腰を下ろします。
列車は左にチューリッヒ湖を見ながら走ります。ヨットが何艘も浮かんでいます。やがて湖が見えなくなると渓谷沿いになり、アルプスに分け入って行きます。列車は渓谷を一旦逆に走って高度を稼ぎ、ゴッタルト峠のトンネルを抜けます。
はるか下に渓谷を見ながらしばらく走り、ハイウェイの下をくぐったところで下を見ると2段に複線のレールが見えています。いよいよ2重ループ線にさし掛かりました。トンネルに入って左に左にカーブし出たところで今度は上と下を見ます。たしかに両方に線路があります。ハイウェイの方は、谷の向かいの山なみを一気に駆け下りています。そして列車はもう一回ループトンネルに入ります。
谷底近くまで降りて来ると、このあたりからスイスもイタリア語圏になり、駅名もそれらしい響きになります。アルプスの南側にも湖があり、車窓は再び水の風景となります。湖が見えなくなるとイタリアに入り、列車は太陽照り付けるミラノ中央駅に着きました。
さて、いよいよ何かと物騒な噂の多いイタリアに降り立ちました。まず、リラを手に入れるため両替所に向かいます。民間ではなくオフィシャルな両替所らしく、きちんとパスポートの提示を求められました。レートは良いようです。
次は、明日のローマ行きペンドリーノの予約です。訳も分からず適当に並んだ窓口で、「予約できません。ストライキ中です。」と言われました。乗車券は買えるようなので、予約業務のみストライキしているらしいのです。(始めは列車の運行がストライキだと思ってドキっとしたのですが。)「どうすればいいのか。」と尋ねると、「ユーレイルパスがあるならそのまま乗って良い。」とのこと。特急料金無しで乗れるとは思いませんが、車内で清算するにしても罰金を取られてはかないません。
念のため、予約専用の窓口へ行くとそれらしい張り紙がしてあり、でも窓口に人が居るので、ペンドーリーノ予約について申し出るとやはり「ストライキです。」とのこと、続けて「どの列車に乗りますか。」「朝6:50発」「ユーレイルパスをお持ちでしょうからかまわないので乗ってしまってください。」とやりとり。いちおう2人とも同じ事を言っているので、しぶしぶ駅を後にします。
ホテルへはすんなりと到着。暑いですが、駅前のトラムを撮影するために外出します。ホテル近くのレストランで食事でもしようかと思って店を覗くと、「ジーブン」といって指を7本示します。店の前の客らしい人たちも同じことを言ってます。どうやら7時から営業らしいことがわかって、その店を後にします。店にいた女の子が「ジャポネ、ジャポネ」と言って走り回っています。日本人とわかるらしいです。
駅前のワゴンで水を買ったら、500mlで1000リラでした。これまでで一番安いと思います。これまでは、スーパーマーケット等を探している暇がないのでどうしても割高の水を買わざるを得ない状況でありました。
今日は、ローマまで往復します。まず、出掛けにフロントで帰りの飛行機のリコンファームを頼んでおきます。多少不安ですが仕方ありません。駅に行くと、ローマ行きのペンドリーノ(ETR460型)は既に入線していました。
予約はできなかったので、適当な車両に乗り込むと丁度車掌がいました。予約がないのだがと言うと「OK」とのこと。何がOKなのか良く分かりませんが、とりあえず席を確保しておきます。
発車すると程なく検札があり、「予約はありますか。」と尋ねるので、「昨日ストで出来なかった。」と答えると、「では、今ここで料金を払って下さい。」とのこと。というわけで11400リラ(約800円)支払いました。この金額なら罰金は含まれていないようです。
ETR460型は振り子式の電車ですが、自然振り子らしく曲線で振り子が作動するたびに「クン」という軽いショックがあります。この「クン」という感じはJRの381系と同じです。高速新線「ディレティッシマ」の区間に入ると見違えるようなスピードで走ります。しかし、走るときは懸命に走るのですが、平気で駅でもないところで15分くらい止まったまま動かなかったりします。結局20分くらい遅れてローマに着きました。せっかく高速で走っても、定時運行できなければあんまり意味がありません。
せっかくのローマですから、一箇所くらい観光して行こうと思います。ローマ・テルミニ駅で地下鉄の路線図を眺めていると、2駅目に「コロッセオ」がある事に気づきました。時間的に手頃なので、行ってみることにします。
地下鉄の駅から出た目の前に、コロッセオがありました。幾度と無くTVなんかで見たその形のままに。写真を撮るのによいアングルを探して、坂を上がって行くと、そこにアイスクリームのワゴンがありました。やはり、ここでイタリアン・ジェラートを食べておかねばなるまいと、頭の中で「ジェラート・ペルファボーレ」とオーダーの言葉を組み立て口に出そうとした瞬間、おっさんと目が合って先に'Ice Cream ?'と言われてしまい。'Oui...'(それはフランス語だっつーの:正しくは'Si.')と間抜けな答えをしてしまいました。ジェラートは結構な量だったのですが、暑いのでほどなく食べ終えました。
トラムが走っていたので、コロッセオをバックに写真を撮ります。ミラノと同じく黄色の電車です。周囲の道路は余り広くないのですが、交通量は多いです。スクータも頻繁に通ります。コロッセオの周囲にそってさらに行くと、入り口が見えてきました。中に入ると、巨大迷路のように壁が幾重にも立っています。闘技場ということで、もっとフラットなイメージを持っていたのですが..。
では、ミラノまで戻ることにします。帰りはペンドリーノではなく普通の特急列車に乗ります。列車に乗りこんで、やれやれやっと冷房にありつけると思っていたら、ちっとも涼しくありません。クーラーが故障しているようです。他の席は既に埋まっていて、涼しいけれど立つか、暑いけど座るかの究極の選択をせまられました。ミラノまで5時間です。結局、我慢できるうちは座って行こうということにしました。
フィレンツェで、乗客が少なからず降りたようなので、また空席を探しにいきます。隣の車両で向かい合わせ2人席(要するに一人がけの椅子が向かい合っている席です。)の片方が空いていたので、向かいの席の男性に「リブロ?」と昨日覚えたイタリア語で尋ねると、一瞬考える間があって「Si,Si,Si」と返事が返ってきました。
やっと正気で車窓を眺められるようになりました。この列車はディレティッシマを通らないので、若干景観が良いように思います。渓谷沿いの風景もあります。冷房も快適です。
ミラノまでの最後の一駅間は、なぜか思い切りスピードを出しているようです。このままではかなり早着するぞと思っていたら、案の定、定刻より10分も早くミラノに着きました。この国では、他の国に輪をかけて定刻運転できていないようです。
ホームへ降り立つと、これまた暑い。(何度もでてきてすいません。これほど暑いとは予想していなかったのもので。)まず、明日の朝ミラノで3時間余裕が出来れば観光したいと思って、駅のインフォメーションで列車の時刻を確認します。やはり、予定通り朝8時くらいの列車に乗るしかないようです。
ホテルへ戻るとフロント氏は今朝と同じで、私の顔を見るなり「リコンファームしておきました。」と呼びかけました。これで、安心して旅を続けられます。部屋で小休止の後、外出、和食レストランで久々に天ぷらを食べました。大変にいいお値段でした。
旅も終盤にさしかかってきました。残り3日間はスイスの山岳鉄道の旅です。まず、ベルニナ急行の始発駅ティラノへ向かいます。ティラノ行きの列車は、朝の通勤客がちらほら乗っていましたが、市街地が終わるまでにはあらかた降りていってしまいました。
山なみが迫ってくると、コモ湖のほとりを行くようになります。コモ湖に限らず、氷河が溶けた後にできた湖は、湖岸の地形がより急峻なため日本の山岳地帯の湖とは違った印象を受けます。
コモ湖が見えなくなると、列車は広い谷を登っていきます。アルプスの山々が間近に見えてくると、やがてティラノに到着しました。ここで3時間も待ち合わせがあります。コインロッカーが無いので、一時預かりへ預けます。5000リラ(350円)でした。
スイスのサン・モリッツへ至るベルニナ線のティラノ駅は、イタリアの鉄道とは別の駅です。駅の入り口がスイスとの国境扱いになっているため、駅舎に入る時点でパスポート・チェックがあります。中へ入ると、通路の壁に「ティラノ」とカタカナで書かれた駅名票がありました。日本の箱根登山鉄道とこのベルニナ線は姉妹鉄道の関係にあり、この駅名票は箱根登山鉄道から寄贈されたものです。
ホームへ出ると列車は組成中でした。やがて、先頭の電車2両の後ろに客車が6両連なった列車が出来上がりました。電車が客車を牽くというのも変ですが、後6両は前2両に比べて車体の大きさや、機器の重量感が異なり、なによりも最後尾には運転台が無いため電車とは呼べない車両です。
バカンスの乗客でいっぱいになった列車はティラノを発車しました。すぐにティラノの市街地を抜け、急勾配、急カーブでぐんぐん高度を稼いでいきます。日差しは強いですが、空気がひんやりしてきました。ひとしきり登ると、列車は氷河の跡のU字谷を行くようになります。広い谷底の一番低いところが湖になって、その周りのなだらかな斜面は一面草原で、家々が点在しています。
列車はしばらく谷を走って、U字谷のどん詰りで反転し、右に見ていた谷を今度は左に見ながら斜面を登っていきます。ずいぶん前に通り過ぎた湖が再び見えてきます。そしてまた反転し、谷は再び右側へ移ります。この後、2度同じことを繰り返し、谷をずいぶん高いところから見下ろす様になります。絶景です。
いくつかトンネルを過ぎるうち周りの景色が、草原から岩肌に変わります。左手に大きな氷河の末端が見えています。カメラを構えて、丁度いいアングルだなと思っていたら、駅に停車しました。真白で巨大な氷の棚が陽光に照り映えています。じっと見ていると目が痛くなります。列車はさらに登って、最高地点(標高2,253m)の駅を過ぎます。
こんどは比較的なだらかな下りになって、高度を下げて行きます。再び地面が草で覆われるようになり、家々もちらほら見えてきます。やがて、ポントレジナに到着。後ろの6両の客車は別の機関車に牽かれて、クールへ。残された電車2両でサン・モリッツへ向かいます。
スイス屈指のリゾートサン・モリッツは、湖畔の小さな街でした。駅に降り立つとこちらにも片仮名標記の「サン・モリッツ」の駅名標がありました。駅の規模は思っていたより大きく、ホームが5番線くらいまであります。駅の外へ出ると、オフシーズンなので辺りはひっそりとして、いわゆる「リゾート」らしからぬたたずまいです。前方の斜面に目指すホテルがありました。まずはチェックインすることにします。部屋は湖の側に面しており、丁度駅が見下ろせます。駅構内のヤードの向うは森、そしてその向うにアルプスが見えます。
中心街へ向かいます。チョコレート専門のお土産屋があり、ここにも日本人の家族連れがいました。レストランにでも入ろうかと思っていたら、雲行きが怪しくなってきました。急いでホテルに戻ることにします。その後結局雨に降り込められて、ホテルのレストランで夕食ということになりました。
今日は、スイス観光の定番となった氷河急行に乗ります。早めに駅へ行って売店など覗いていると、日本語が目に入りました。氷河急行のガイドブックでした。日本人がたくさん利用していることがよく分かります。駅の窓口では日本人のツアコンが団体の切符の手配をしていました。当日やっていて大丈夫なのかとも思いますが、まあ、まだ時期的に比較的空いているのでしょう。
サン・モリッツを発車した列車は、ループ線を何回も通りながら峠越えをします。昨日乗ったベルニナ急行ほど視界は開けていませんが、なかなかのものです。食堂車の予約を取りに来たので、予約しておきます。ライヒェナウで折り返すと、フォルダーライン川の谷をひたすら登っていきます。氷河をまとった山なみは見えますが、ベルニナ急行ほどには間近に見えません。
予約した時間が来たので食堂車へ行きました。一番乗りだったので、手の空いていたボーイに写真を撮ってもらいました。食事そのものは肉と野菜とパスタが一皿に盛られていたような記憶があります。あまり美味しくなかったです。
席に戻るとお土産を売りにきました。片言の日本語で商品をいろいろ説明してくれます。結局スラント・グラスとサンバイザーを買いました。この車内販売は日本円が使えます。
やがて谷を登り詰め、峠の短いトンネルを抜けしばらくいくと、急に視界が開け眼下にアンデルマットの街を望みます。駅も見えます。列車は九十九折りの線路をぐんぐん下っていきます。
アンデルマットを出た列車は再び谷沿いに登っていきます。フルカ峠の長いトンネルを抜けると、こんどはローヌ川の谷を下っていきます。氷河は比較的近くに見えるようにはなりましたが、ベルニナ急行の方がやはり間近に見えるような気がします。
氷河急行はやはり観光列車です。観光ムードがお好きでなければ、同じ区間を直通ではありませんが普通列車も運行されていますので、そちらを利用された方が良いと思います。そんなことを思っているうちにブリークに着きました。列車はこの先ツェルマットまで直通していますが、私はここで下車します。
まず、ブリークからは普通列車でシュピーツまで行きます。ガラガラの列車に乗り込み荷だなに荷物を上げていると、青年が"Can you watch my baggage ?"と頼んできたので、「そーか、『荷物見ててくれませんか』ってのはこういうふうにいえばいいんだ。」と思いながらOKしました。
列車はしばらくローヌ川の谷の北斜面を登っていきます。谷底には川とローザンヌ方面への線路が見えています。やがて右に折れてトンネルを抜け、渓谷沿いに下っていきます。谷底との高度差を解消するために一度上流へ取って返し、しばらく行くとシュピーツです。5分ほど遅れたので、次に乗る予定だったインターラーケン・オスト行きは出てしまっていました。さすがに2分乗り継ぎは無理でした。
つぎのインターラーケン方面はインターラーケン・ヴェストまでしかいきません。どうしようかと思ったのですが、車両がICEだったので乗ってしまいました。湖岸の線路を長い編成をくねらせながら走るICEというのも一興です。
ヴェストに着いたものの、予約の宿はオストです。次の列車を待つうちに歩けば着きそうです。街中を行くと、日本語をちらほら目にします。「ラーメン・そば」と書いたのぼりもあります。模型店もあり、ショーウィンドにメルクリンの客車があります。(あいにく休業でしたが。)レストランとお土産屋がめっきり少なくなってくるとオストの駅が見えてきました。ホテルも難無く見つかり、ひとまずチェックインします。
フロントで手続きの際、門限は12:00だけど、あそこのドアが開いているから..云々の説明を受けました。「カジノとかへ遊びに行っても大丈夫です。」とか言ってます。「私は早く寝たいから」と言うと、「一番列車に乗るのか。」と聞かれました。(この説明は次項で。)「いや、朝食は食べるから。」と答えました。
いよいよスイス観光定番中の定番、ユングフラウ・ヨッホへ登山電車で往復です。あいにく雨が降っています。目指す山々も全く見えません。チェックアウトの際、ホテルに荷物を預かってもらいました。これで身軽に動けます。
駅で切符を買います。インターラーケンを一番電車で出て、ユングフラウ・ヨッホを正午以前に出発する列車で帰ってくれば、ユングフラウ鉄道区間のみ4割引のサービスがあるのですが、早起きする気力が無かったので、ユーレイルパス所持者に対する割引のみ適用されます。
ユングフラウ・ヨッホまでは3つの鉄道を乗り継いで行きますが、経路が2通りあります。往路は、ラウターブルンネン経由で行きます。最初の鉄道は茶とクリームのツートンカラーの車両で、ベルニナ急行と同じく電車が客車を牽いています。この鉄道(BOB)は全区間がアプト式になっているわけではないため、アプト区間に入る際の徐行が2、3回ありました。また、線路付け替えの工事をやってました。
ラウターブルンネンで次の鉄道(WAB)に乗り換えです。'RESERVED'と表示された車両が連結されています。おそらく日本人団体用だろうとおもっていたら図星でした。あちらは満席ですが、こちらはかなり余裕を持って座れます。列車はいきなり急勾配を登りはじめます。斜面を九十九折りに登るので、霧の間に見える谷の風景が右往左往します。白い壁に薄日がさしてくると、眼前にベルナーオーバーランド三山(アイガ・メンヒ・ユングフラウ)が見えてきました。雲の切れ間から少しずつ。列車がさらに高度を稼ぐと、山々は7割がた見えるようになりました。行く手には乗り換え駅のクライネ・シャイデックが見えています。
最後の鉄道(JB)は殆どトンネルの中を走ります。クライネ・シャイデックの次が最後の地上駅で、この先トンネル内にある駅は観光停車するのみです。最初の観光停車では、アイガーの壁からほぼ真下が望め、次では氷河を目の前に見ることが出来ます。そしていよいよユングフラウ・ヨッホへ到着。各国語のアナウンスの最後に日本語でアナウンスが入ります。降り立つと寒いこと。セーターを着ていても冷え冷えします。ヨーロッパで一番高いところにある駅には、カフェテリアと売店があり、日本円も使えます。周囲は岩と氷と雪の世界です。一見の価値はあります。
帰りはクライネ・シャイデックまで同じ道を引き返します。すれ違う列車の日本人団体のおばさんが手を振っています。クライネ・シャイデックからはWABの別路線でグリンデルワルトへ降りていきます。こちら側は霧も晴れて、眼下の景色が良く見えます。列車は急勾配を辛抱強く降りていきます。急斜面で草を食んでいる牛が、大きなカウベルを下げています。グリンデルワルトでBOBに乗り換え谷沿いに下り、途中から、行きに通った路線を逆に通ってインターラーケンへ、あの寒さや涼しさが嘘のように暑いです。
ホテルに戻って荷物を引き取り、オスト駅へ引き返してチューリッヒ行きに乗ります。アルプスが徐々に遠ざかり、旅の終わりを予感させます。まだまだ見慣れない風景たちが通り過ぎて、列車はチューリッヒに到着。さて最後のホテル探しです。
最後だからと気を抜いたのがいけなかったのでしょうか、地図の印の場所はすぐ分かったのですが、そこにあるのはどうみても銀行なのです。しかたなく所在地から割り出すべく、くそ暑い街中をさまようこと30分。ようやくたどり着きました。
気を取り直して、トラムに乗ることにします。チューリッヒ湖を見たいのでそちら方面へ行きます。湖では市民が夕涼みの真っ最中、岸によせられたヨットの縁を白鳥が泳いでいきます。湖岸にあるトラムのターミナルの側線ではレストラン・トラムが営業中でした。
帰国の日がやってきました。最後まで気を抜かずにいきましょう。列車でチューリッヒ空港へ、最後の最後までユーレイルバスを使いました。チェックインして免税店で土産を物色、売り子のおばちゃんが日本人でした。久々に日本語で会話。待ち合いのベンチに集まってくる日本人が随分増えたなと思っていると、どうやらゲート変更のアナウンス。ほぼ同時に移動し始めた人と「ゲート変わりましたよね。」と確認しあいながら歩きます。
無事搭乗して着席。隣の席はツアコンらしく、団体客を仕切るため立ったり座ったりバタバタしています。「喫煙席が取れなくてすいません。」とか謝ってます。仕事とはいえ嫌煙家の私は同情してしまいます。
フライトはきわめて順調、ただ成田着のアナウンスで「現地の天気は霧」と言った際に、「霧なのに降りるんじゃねーよ。」と思いました。しかし、飛行機はなんなく着陸してしまいました。地面が見えた2秒後に地面にタイヤが着くショックがあったのに..。
成田で乗り継ぎ、眼下に富士山を見ながら名古屋へ。異国の婦人が「フジヤマ、ビューティフル。」を連発していました。彼女にとっては、旅はまだ始まったばかりです。「良いご旅行を。」今まで一番心から言える瞬間です。
<終>